日本コミュニケーション学会九州支部
第10回記念大会
プログラム

The Communication Association of Japan
Kyushu Chapter
10th Convention


大会テーマ:「コミュニケーション研究の多様性
‐課題と方法」



後援

熊本県教育委員会
熊本日日新聞社


2003年10月12日(日)
October 12(Sun), 2003



熊本学園大学

〒870-0397 熊本県熊本市大江2-5-1
電話:096-364-5161(代表)

Kumamoto Gakuen University
2-5-1 Ohe, Kumamoto-shi, Kumamoto-ken
Tel:096-364-5161





大会案内
 
1. 大会参加者は参加費2000円を当日、受付にて納入してください。
2. 九州支部会員の方は支部総会に必ずご出席ください。
3. 昼食は休日のため大学内の食堂が閉まっておりますので、昼食(1000円)を予約するか、昼食をご持参ください
4. 懇親会費は6000円です。予約の必要がありますので、参加される方は同封の葉書、又はファックス、e-mailでお申し込みの上、当日受付にて会費を納入してください。申し込みを10月6日以降にキャンセルされた場合は会費の全額を申し受けます。
5. 会場は、12号館です。
6. コーヒー、お茶、その他の飲み物は、ご自由にお取りください。
7. 学内駐車場は利用できませんので、お車でのお越しはご遠慮ください。
8. 参加申し込み又は問合せ
大会実行委員長 佐藤勇治(熊本学園大学)
  Tel 096-364-5161 / Fax 096-372-0702 / e-mail: ysato@kumagaku.ac.jp
  又は日本コミュニケーション学会九州支部事務局
  長崎市三ツ山町235 長崎純心大学 畠山均
  Tel 095-846-0084 / Fax 095-849-1894 / e-mail: hatakeyama@n-junshin.ac.jp
 
発表者の皆さまへ
本大会では研究発表会場にタイムキーパーとして学生が一人配置されていますが、司会者はおりません。ご自分の発表時間になりましたら発表をはじめてください。プロジェクターやOHPなどの機器は会場に用意してありますが、準備や操作はご自分でお願い致します。ハンドアウトを準備する場合は30部程度用意いただき、発表前にご自身で配布ください。
終了時間は厳守ください。ご協力をお願い致します。




※演題をクリックすると特別講演、研究発表、及びパネルディスカッションの要旨を見る事ができます。

08:20〜 受付
09:20〜09:50 開会式  司会: 筒井 久美子 (熊本学園大学)

  支部長挨拶: CAJ九州支部長   佐藤 勇治 (熊本学園大学)
  会場校挨拶: 熊本学園大学学長  坂本 正
  会長挨拶  : CAJ会長        北出 亮   (拓殖大学)
  来賓祝辞  : CAJ元会長      川島彪秀  (日本大学)
  


10:00〜11:20 特別講演
 「水俣病からのメッセージ」

   講演者: 原田 正純 (熊本学園大学教授)
     司会: 佐藤 勇治 (熊本学園大学)


11:20〜12:00 支部総会 (九州支部会員は必ずご出席下さい。)


12:00〜12:50 昼休み   (昼食は弁当を予約するか、各自ご準備下さい。)


研究発表

12:50〜15:20 A会場
 12:50〜13:20 暗黙知の探求:
全体性のコミュニケーションへの序章
坂井 二郎
(千葉大学非常勤講師)
 13:20〜13:50 武士家計簿に見るコミュニケーション手段としての会計言語
−江戸時代の家計簿の一考察
坂田 善種
(拓殖大学)
 13:50〜14:20 IR活動における会計コミュニケーションの性格
−受信者側の反応に注目して
玉井 勲
(取手市国際交流協会)
 14:20〜14:50 祭りの観光化と地域のコミュニケーション
−祇園祭と天神祭の比較よりー
中林 真佐男
(関西外国語大学)


12:50〜15:20 B会場
 12:50〜13:20 異文化間教育としてのParliamentary Debateの意義
―討論教育の課題と展望
中野 美香
(九州大学
大学院生)
 13:20〜13:50 コミュニケーション教育としてのReading学習支援の試み 畠山 均
(長崎純心大学)
 13:50〜14:20 大学生の携帯メール絵文字使用によるメッセージ
−送り手、受け手としての認識
五十嵐 紀子
(新潟医療福祉大学)
糸井 江美
(文教大学)
 14:20〜14:50 Franklin D. Roosevelt のコミュニケーション
−危機管理の視点から−
佐藤 勇治
(熊本学園大学)
 14:50〜15:20 “Show What You Mean”:「伝え合う」
−外即内・内即外
田所 信成
(福岡大学名誉教授)


15:20〜15:40 休憩


15:40〜17:40 パネルディスカッション
 「コミュニケーション研究の多様性-課題と方法」
   パネリスト: 宮下 和子  (鹿屋体育大学)
           船山 和泉  (熊本大学)
           筒井 久美子(熊本学園大学)
      司会: 高瀬 文広   (福翔高校)


17:40〜17:45 閉会式  司会: 筒井 久美子 (熊本学園大学)

  挨拶: CAJ九州副支部長 畠山 均 (長崎純心大学)


19:00〜20:30 懇親会 KKRホテル熊本  司会: 船山 和泉 (熊本大学)




発表要旨集


特別講演


「水俣からのメッセージ」
原田 正純(熊本学園大学)
講師紹介
 熊本学園大学 社会福祉学部教授。1934年鹿児島県生まれ。1960年熊本大学医学部大学院終了。医学博士。熊本大学医学部大学院神経精神医学研究科で胎児性水俣病の臨床疫学的研究に従事。この研究で1964年に日本精神神経学会賞。熊本大学医学部勤務を経て、1999年より熊本学園大学に。1989年、『水俣が映す世界』(日本評論社)で第16回大佛次郎賞。『水俣・もう一つのカルテ』(新曜社)で第31回熊日文学賞。1994年、国連環境計画(UNEP)グローバル500賞。2001年、吉川英治文化賞。『水俣病』、『金と水銀』、『人体と環境』など著書多数。

 これまでの水俣病の研究を通して、「水俣学」の目指すもの、なぜそのような考えに至ったか、現地の大切さ、素人と言われる人の指摘の正しさ、専門家とは何かという問いかけなどをお話しします。



研究発表要旨
研究発表 A会場

暗黙知の探求:
全体性のコミュニケーションへの序章
坂井 ニ郎
(千葉大学非常勤講師)
暗黙知とは、簡単に言えば、未だ言語化されていない様々な知識のことをさす。この依然として顕在化されていない暗黙知には,個人の経験から汲み出される個人知,直観知,我々の身体感覚,身体動作に根ざす身体知など、様々な種類がある。しかしながら、そのコミュニケーションプロセスは性質上非常にあいまいでわかりにくいものである。そこで、本論では、コミュニケーションの分野で見落とされがちである暗黙知のコミュニケーションの実態に迫りたい。具体的には、暗黙知の意味、多様な暗黙知のコミュニケーションプロセス、そして暗黙知のコミュニケーション研究における位置付けなどを論じていく。
 

武士家計簿に見るコミュニケーション手段としての会計言語
−江戸時代の家計簿の一考察
坂田 善種
(拓殖大学)
 『ハムラビ法典』におけるいくつかの会計にかかる記述を取り上げ、会計言語がいかなるコミュニケーションを志向し、いかなる使命をもって生起したのかを探った。そして、昨今、明かになる企業粉飾は、会計言語が本来の使命を果たしていない結果ではないかと結論づけた。本発表では、江戸開府400年に因み、江戸時代の武士の家計簿を取り上げ、現代の家計簿との類似点・相違点を挙げながら特徴的な数点を会計言語とのかかわりで考察する。家計簿という会計帳簿から武士の生活の一端を垣間見て、武士達がいかなるコミュニケーションを志向していたのかを、明かにしたい。
 

IR活動における会計コミュニケーションの性格
−受信者側の反応に注目して−
玉井 勲
(取手市国際交流協会)
 IR活動は、investor’s relationsの略であり、企業が会計責任を果たすための一環として、自主的に投資家などの外部の利害関係者に対して必要とされる情報をコミュニケートすることである。しかしながら,IR活動は単に拠出資本の運用状況や経営活動の成果を報告するためだけではなく、むしろ外部の利害関係者の側から見た企業の現在の姿を把握することを目的としている。と言うのも、情報の受け手側の声を無視した経営戦略では、企業イメージが悪化する恐れがあり、その結果として売上の減少や株価の下落などを引き起こしかねないからである。そこで、IR活動によって受信者からどのような反応を引き出すことができるかについて検討してみたい。
 

祭りの観光化と地域のコミュニケーション
−祇園祭と天神祭の比較より−
中林 真佐男
(関西外国語大学)
 祭りの原点はsuper naturalな神、カミと人間とのコミュニケーションであった。人間同士の集まりが村社会の祭りとなり、今日の都市祭礼に発展してきた。例えば、祇園祭は疫病の払う目的で神事として始まったが、これが夏祭りとなり町衆の祭りに発展していく。
 さらに、ツケ祭りが本来の祭りよりも大きく発展し祭りの本流を形成してしまう。例えば、天神祭のギャルみこしや花火大会はツケ祭りの延長であり、観衆とのコミュニケーションがますます密接になり、これが観光化への道をたどるのである。すなわち、多くの都市祭礼は行政の支援も得て完全に「見せる祭り」に発展し、「参加型」から「見物型」に移行していく現象を検証してみたい。そこで、今回実施した「祇園祭」と「天神祭」のフィールドワーク調査を基に両者を比較しながら、グローバル時代の祭りの観光化と地域のコミュニケーションについて考察したいと思う。
 
研究発表 B会場

異文化間教育としてのParliamentary Debateの意義
−討論教育の課題と展望
中野 美香
(九州大学大学院生)
 国際化に伴う物資、情報、人の移動によって異文化接触が「日常」となった今日、現代社会においてわれわれはいかに他の文化の理解を深め共存するかという課題に直面している。このような時代背景から既存の教育の枠組みを越えた異文化間教育という新たな研究・実践分野が設立され、その教育方法の一つとして討論教育の必要性を説明する試みがなされてきたが、依然として課題は多く残されている。そこで、元々「異文化理解」という理念をもち、近年の国際理解のニーズの高まりと一致するように世界的に飛躍的な広がりを見せているParliamentary Debateの意義を考察することによって、異文化間教育における討論教育のさらなる可能性を提案する。
 

コミュニケーション教育としてのReading学習支援の試み
畠山 均
(長崎純心大学)
 少子化、国際化、高学歴化等を背景として今日ほど大学教育の質が問われている時代はない。大学の役割はこれまでの研究中心から教育、それも学生の学習支援へと変わっていくべきと指摘されている。このような変化の中でコミュニケーション教育は外国語教育だけではなく、教育全般の中で大きな役割を果たすべきと筆者は考える。この発表では筆者が担当している英語科目の中で、学生の学習支援(指導ではない)を目的とし、コミュニケーション教育の視点から再構築して実践してきたReadingの授業の概要を報告する。
 

大学生の携帯メール絵文字使用によるメッセージ:
送り手、受け手としての認識
五十嵐 紀子
(新潟医療福祉大学)
糸井 江美
(文教大学)
 携帯電話によるメールのやりとりは、大学生にとって欠かせないものになっており、その目的は連絡、挨拶から他愛のないおしゃべりまで様々である。彼らは文字だけでなく絵文字を組み合わせたメッセージを多くやりとりしているが、絵文字に送り手としてはどのようなメッセージを含め、受け手としてはどのように解釈をしているのだろうか。本研究では、学生から学生、そして学生から教員に送ったメールの比較分析と、絵文字を含んだメールに関するアンケート、及びインタビュー調査を行うことにより、携帯メールの絵文字利用の実態を把握し、それに関わる問題点を明らかにしたい。
 

Franklin D. Roosevelt のコミュニケーション
−危機管理の視点から−
佐藤 勇治
(熊本学園大学)
 バブル経済の崩壊以来10年以上の不況が続き、未来への展望を見出せない「大いなる不安」の渦中に日本国民はいる。同様に1930年代と40年代半ばまでのアメリカは世界大恐慌と第二次世界大戦への参戦により、未曾有の苦難の中で「大いなる不安」を経験していた。この不安の時代を、Franklin D. Roosevelt はアメリカ大統領として国を率い史上類まれな四選を果たすが、どのようなコミュニケーションを通じてアメリカ国民の心を捉えたのであろうか。本研究では、Roosevelt が在職中に行った演説を素材として、危機管理の視点から見たコミュニケーションの特徴を明らかにする。
 

“Show What You Mean”:「伝え合う」
−外即内・内即外−
田所 信成
(福岡大学名誉教授)
 「伝え合う」が今や、日本国の「国語教育」の至上命題である。小学校・中学校・高等学校『学習指導要領』(実施、小・中 平成14年度;高 平成15年度)の「国語科」の「目標」に、共通に「伝え合う力を高める」の1項があることに着目すれば、後半「〜力を高める」に重きがいきそうであるが、枢要・根元は前半部「伝え合う」に、しかも「合う」にあろうと見て、そこが此の学会の関わるところであり、逸早くこの場において共に究明しようという次第である。
 「外国語科」改訂『学習指導要領』(実施、小・中 平成14年度;高 平成15年度)においてそれの目標は、そして第4回の大会(1997)で私が「目標」の目玉として標題に掲げた所は、そのまま生かされ、さらに強化され、「‘情報や相手の意向などを理解したり自分の考えなどを表現したりする’実践的コミュニケーション能力を養う。」と結ばれる(‘ ’部 高校)。その「表現」という述語も実は由緒新しいのである。
 他方、「国語科」において高校の教科目に、新たに「国語表現」(I、II)が登場し、片や「外国語科」に在来の「オーラル・コミュニケーション」(I、II)! 何とここで二教科が通底する事態である。
 個々に「国語」であり「外国語」であるものを《多即一・一即多》と我が内に摘み取る手がかりを、上に取り出した「合う」における関係に置く。
 表から“Show What You Mean”(Toastmasters International, Inc., USA)、裏から“What did you mean by those words?”(Wittgenstein)の両面作戦を構えて「表現」ということを日常化するのである。知的自己から行為的自己に立って一種〈教室即道場〉的になりゆくであろう。
 「表現」とは学的には、「他に於いて自己を見る、内を外に見ると云うことである。」また、「言語が思想の表現で有るとは云ふことは、...思想が物たる言語に於いて自己を有つが故である。」(西田幾多郎「物理の世界」、1944)。
 統合して「表現」は、これを視るに巧拙、良否を外し、「いき」を評価の観点に!「所詮、肝要息なり。」(禅竹、1460)なれば。




パネルディスカッション

「コミュニケーション研究の多様性−課題と方法」
パネリスト: 宮下 和子  (鹿屋体育大学)
        船山 和泉   (熊本大学)
         筒井 久美子 (熊本学園大学)
司    会: 高瀬 文広  (福翔高校)
宮下 和子 (鹿屋体育大学)

ドラマが異文化への理解と融合を命題とするには、歴史の多角的解釈に基づくストーリー化と演出が必要であろう。しかし、通算4半世紀の歴史を持つJETのグローバル化にも見られるように、異文化ドラマの展望は明るく、コミュニケーション研究の課題として、また異文化教育にとっても有意義であるということを考察する。 
船山 和泉 (熊本大学)

絶対的な文化の性質や文化の違いが個人をコントロールするのではなく、むしろ個人がそのコミュニケーション活動を通して「文化」や「文化の違い」の意味を相対的に構築してゆく現象を検証する意義を提唱し、その検証を可能にする方法論を議論する。
筒井 久美子 (熊本学園大学)

異文化コミュニケーションの調査を具体例に、その際に用いた異なる手法(定量分析と定性分析)について、それぞれの利点と問題点を述べる。また、これからの異文化コミュニケーション研究はどういった点を視野に入れ、発展させていくべきかを考察する。