第9回支部大会報告

報告者:横溝 彰彦


 第9回支部大会は2003年10月13日(日)に「異文化コミュニケーションの原点を探る」というテーマの下に行われた。設備の整った日本文理大学(大分市)で開催できた幸運もあり、本部の年次大会以上にパソコンやプロジェクターといった機器を使った発表が目立ったように思う。かく言う私も支部総会でのHPの雛型お披露目のためにノートパソコンとプロジェクターを使用したが、準備段階から大学職員の方の対応がとても良く大会前から好印象を持っていたが、その期待が裏切られることはなかった。


 様々な発表が行われたが、その中でも吉武正樹氏の発表は大会テーマに真正面から取り組んだものだった。現在の異文化コミュニケーション研究がぶつかっている研究方法のアプローチ間の力関係という難解な、しかし分野の発展のためには避けて通れないであろう問題について氏は論じられた。
 

 
 アメリカのアリゾナ州立大学のジュディス・マーティン&トマース・ナカヤマにより、異文化コミュニケーション研究は大まかに社会科学的アプローチ、解釈学的アプローチ、批判的アプローチの3つに分類されている。これら3つのアプローチはそれぞれ異なるメタ理論的背景を拠り所にする事によって研究の多様性に貢献しており、それぞれ長所も短所もありどれか1つが他の2つより優れているわけではないとするマーティン&ナカヤマの弁証論的(dialectical)な視点が広まった。しかしパラダイムに関する議論がこの弁証論的視点に集約されることによってそれ以上の議論が以前ほど行われなくなった。各パラダイム内での議論はされるがパラダイムの枠を超えた議論は少なく、ここ数年アメリカの異文化コミュニケーション研究はメタ理論的に停滞しているように思える。

 しかし、吉武氏はマーティン&ナカヤマによる横一列にアプローチを並べるという相対的な視点からの脱却を試みた。他の2つのアプローチから生まれた研究が社会科学的アプローチを用いてテストされ、そのような実証主義的な研究成果が他の2つのアプローチによる研究成果より一般的に評価されやすいというヒエラルキー的な搾取の構造について危惧するものである。研究の多様性が重んじられ始めた昨今の風潮を更に一歩進めてそのあり方に焦点を絞った研究発表であり、研究者として十分留意すべき視点だという印象を持った。普段パラダイムに関して論議する機会が少ないため、大変有意義な発表だったと思う。コミュニケーション学という研究分野に携わる自分自身への良き反省、そして刺激となった。分野の細分化が進んだ今、各論だけでなく、研究の根幹を成すこのようなメタ理論的な議論が今後も続くことを期待する。


 特別講演には大分県ワールドカップ推進局局長の斎藤哲氏を迎え、「2002FIFAワールドカップ大分開催 −大分は世界をどう迎えたか」という表題で話をしていただいた。昨年は日本のみならず世界各国がワールドカップサッカーで湧いたが、合宿地の中で最も注目を集めたと言ってもいいであろう中津江村の苦労話やその後の観光地としての成功などメディアでも盛んに取り上げれられた話を実際の担当者の方から聞くのは大変興味深かった。誘致も含めて準備から開催まで10年も費やされたと聞き、参加者一同が驚いたのを鮮明に覚えている。
 
 ワールドカップムードを高めるために地域の学校給食にイタリア料理を導入された話や、個人・団体・企業・行政の協力体制、警察・医師会・自衛隊の防災体制、3000人を超えるボランティアの果たした役割の大きさなどメディアでは取り上げられにくかった話を直接の統括者から聞けたのは非常に幸運だった。発表ではパワーポイントを使用されて画像や図をふんだんに盛り込まれており、この講演のために周到に準備していただいた跡が伺え、参加者からは大変評判が良かった。


 閉会式の後、立食形式の懇親会がJR大分駅近くの「ホテルくれべ大分」で行われた。橋本満弘先生の乾杯の音頭で会は始まり、和気あいあいとした雰囲気の中で歓談が弾む。互いの近況を確認したり、情報交換をするなどして親交を深め、皆さん良き充電となったようだ。

 今回初めて九州支部大会に参加させていただいたが、九州支部会員以外の発表者・参加者の姿も目立ったのは驚きでもあり、いい刺激となった。たくさんの方々と知り合いになれたが、今後本部の年次大会や支部大会等でお会いする際に旧交を温めていきたい思う。

 最後になるが会場校や懇親会のお世話をしていただいた日本文理大学の清水孝子先生にここで改めて謝辞を表したい。「お疲れ様でした。」 



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