2003. 9
NEWSLETTER No.16 September 2003
日本コミュニケーション学会九州支部 CAJ九州支部
KYUSHU CHAPTER 支部長:佐藤勇治(熊本学園大学)
of The Communication Association of Japan 事務局:
〒852-8558長崎市三ッ山町235
長崎純心大学 人間心理学科
畠山 均 研究室内
Tel:095-846-0084
Fax:095-849-1894
E-mail: hatakeyama@n-junshin.ac.jp
支部長挨拶 |
支部長 佐藤勇治(熊本学園大学)
皆様お元気でお暮しのことと思います。夏休みは良きエネルギー充填の期間になりましたでしょうか。間もなく九州支部創立10周年記念大会を迎えます。人生と同様に、どのような活動も10年は一つの節目であろうかと思います。過去を振り返り、その業績に自信を深めると同時に改善点を見出し、次の10年を展望する重要な時に位置しています。
この10年間で支部会員数も増加し、今では約60人近くの会員を有するまでに成長しました。また、プロシーディングスの発刊から始まった学会の研究記録を残す活動も、今年の6月には九州支部紀要の発刊という形で花を咲かせました。また、インターネットの時代にふさわしい、九州支部ホームページも開設にいたりました。改めて、それぞれの活動に関わられた諸先生方に厚く御礼申し上げます。
さて、今年の10周年記念大会は本部との共催となっておりますが、記念大会にふさわしく北出会長と、学会創設者の川島先生を来賓としてお迎えすることになっており、大変光栄に存じます。また、従来の研究発表に加え、熊本学園大学教授で水俣病を中心とする公害病に関する研究で世界的に知られる原田正純先生の特別講演やら、九州支部の気鋭の研究者によるパネルディスカッション「コミュニケーション研究の多様性:課題と方法」も予定しております。
支部総会では、2002年度の活動報告と決算報告、2003年度の活動方針と予算案をご審議いただく予定ですが、今年は支部紀要の電子ジャーナル化の問題と、支部規程の改正問題もご審議いただきたいと思います。支部紀要の電子化が実現すれば、大幅なコスト削減により長期安定的に支部紀要を発刊できると共に、利便性も向上しますので皆様への学術サービスの質を高めることができると考えております。また、支部規程も今後の発展にそぐわない部分もあるようですので、今後の10年のために見直しておきたいと思います。
以上、10周年記念大会を前に現状と課題をご報告しました。それでは、10月に熊本でお目にかかるのを楽しみにしております。お元気でお過ごし下さい。
10周年記念大会と特別講演のご案内 |
◆ 10周年記念大会
今回の支部大会は第10回目になりますので「10周年記念大会」として下記の要領で
実施されます。
期日;平成15年10月12日(日)
場所:熊本学園大学
テーマ:コミュニケーション研究の多様性:課題と方法
◆特別講演について
本記念大会の特別講演を原田正純先生をお迎えして、「水俣からのメッセージ」という
テーマで行います。
原田正純先生 プロフィール:
熊本学園大学 社会福祉学部教授。1934年鹿児島県生まれ。1960年熊本大学医学部大学院終了。医学博士。熊本大学医学部大学院 神経精神医学研究科で胎児性水俣病の臨床疫学的研究に従事。この研究で1964年に日本精神神経学会賞。熊本大学医学部勤務を経て、1999年より熊本学園大学に。1989年、『水俣が映す世界』(日本評論社)で第16回大佛次郎賞。『水俣・もう一つのカルテ』(新曜社)で第31回熊日文学賞。1994年、国連環境計画(UNEP)グローバル500賞。2001年、吉川英治文化賞。『水俣病』、『金と水銀』、『人体と環境』など著書多数。 |
支部会員紹介 |
(敬称略&順不同)
山下 徹 (熊本大学)
CAJの会員となり約6年になります。これまで何度か全国大会、支部大会に参加させていただいております。最近は雑務に追われて少しご無沙汰しておりますが、宜しくお願い致します。九州支部には様々な経歴、経験、実践を教育研究のバックボーンにされている方が多くおられることや、支部大会がオープンな雰囲気の中で既成の枠を超えた研究成果の自由な発表の場になっていることに惹かれています。私自身も民間企業に勤務した後に方向転換し、米国のミシガン州立大学大学院に留学しました。
現在の専門はメディアやパブリックコミュニケーションにおけるディスコースの分析、コーパスを活用したテクスト分析です。CMC等の電子メディアを介したコミュニケーション研究にも関心があります。また、これらのアプローチの英語教育への応用についても研究しており、コーパスを利用した教材の語彙特性の研究やオンライン教育(e-Learning)に活用する教材の開発等に取り組んでいるところです。
今年の4月に熊本大学文学部に転任し、平成15年度に新設されたメディア・情報活用能力、高度な英語運用能力を備えた実践的人材の養成を主要な教育目標とするコミュニケーション情報学コースに所属しています。国立大学では数少ない新たな専門領域として創出されたコミュニケーション関連のコースです。また、「英語コミュニケーション論」、「異文化コミュニケーション論」、「スピーチ&ディベート」等の英語コミュニケーション分野と情報・メディア論分野が統合されたコースです。私は英語コミュニケーション論を中心とした科目を担当していますが、英語、情報、メディア、コミュニケーションが融合した領域となるよう日々の教育研究を通して模索していきたいと考えている次第です。
コミュニケーション学は学際的・複合的領域であり、今後、他の研究分野との関連性がより高まる中で、コミュニケーション分野と言語、情報、メディア、社会、文化、教育等の隣接諸分野との関わりの検討及び多様性の中での一定の方向性の提示が求められているように思われます。九州支部の活動においても、今後の教育研究の全体的な課題、展望に関してご教示いただく機会があればと期待致しております。また、共通の関心や研究の接点を持つ方々とのより密接な交流が、研究会等においてできますことを願っております。支部大会において、会員の皆様にお目にかかれますことを楽しみにしています。
筒井 久美子 (熊本学園大学)
昨年4月熊本学園大学に赴任してから早くも1年と半年が過ぎようとしています。3回転するジェットコースターに乗っているような講師生活の中で、未熟でおっちょこちょいな私は、支部長佐藤勇治先生の温かい指導と激励の下、多忙ながらとても楽しく貴重な日々を送っています。今年は、本学学園大で九州支部大会が開催されるということで期待を胸に膨らませる一方、参加させていただくパネルディスカッションでは皆様のご期待に添えるような討論ができるのか、今から緊張の面持ちでいっぱいです。
学園大で教鞭をとる前、私は長年アメリカの大学院でコミュニケーションを学びました。異文化コミュニケーションに興味を持ったのは大学時代でしたが、渡米してその学問のおもしろさを再認識すると共に、その複雑さに試行錯誤する毎日でした。多岐に渡るコミュニケーション分野の中でも、特に組織コミュニケーションに関心を持ち、修士論文では、日本人とアメリカ人のリーダーがいかにコンフリクト(衝突や対立)を対処するかを比較分析しました。また博士論文では、アメリカの日系企業において、異なる文化背景や母国語を持つもの同士がいかに理解し合い、お互いを意識して毎日の業務をこなしているのかをエスノグラフィーを通して調査しました。現在、授業と業務に追われ研究から遠ざかっていますが、これからもこの分野において見識を深め、貢献できるよう努力していきたいと思います。
最近の生活の中で一番の楽しみは、去年10月から習い始めた趣味の陶芸です。日々の雑事から離れたやすらぎと創り出す喜びを与えてくれ、私にとってかけがえのないものとなっています。仕上がった作品を目にするまでの緊張感は常に新鮮で、家に持って帰ってからも手にとって眺めたり、写真に収めたりと、作品への愛おしさは絶えることがありません。一生に一度でも、そのような論文が書けたら幸せだろうとつくづく感じる今日この頃です。
鈴木 千鶴子 (長崎純心大学)
私とコミュニケーション
「私とコミュニケーション」と言う表現は、助詞「と」の多義性により、少なくとも二通りの意味で使われる。一つは、「私」「コミュニケーション」が対等・並列の関係を表す意味。他方は、「コミュニケーション」する動作・作用の対象・相手が「私」であるという解釈。40年前の私は、このような言葉のあいまい性をめぐり、種々の可能性を想起しては、その違いを如何に客観的に表記し、構造的・体系的に説明し理論化することが出来るか、に情熱を傾けていた。今振り返ってみると、いわば理論言語学を齧っていたと言えよう。その私が、いつの間にか「異文化間コミュニケーション」や「英語教育へのIT利用」、そして現在専門的に勉強している「感染症」ならびに「国際保健」に関心を持つようになったのか自問してみると、その過程には、常に多くの人々とのコミュニケーションが大きな役割を果たし、且つ、私自身とのコミュニケーション(前述後者の意味)が真剣になされた結果だと思う。その意味で、人はコミュニケーションを通して学び、成長していく存在であると確信している。
従って、この数年来携わっている、グローバル・ディジーズとしての熱帯感染症・新興感染症制御のための予防教育ないしは国際保健においても、「対人コミュニケーション」ならびに「異文化間コミュニケーション」を基盤としたアプローチを旨としている。さらに最近流行したSARS(まさに途上国地域に〔おそらく〕起因し、先進国に広がる“新興”感染症の一例)に関しては、インターネット上のウェブニュースをデータベース化し、その言語分析を通して予防の観点から疾病と人間・社会の関係を探っており、私もついに「マス・コミュニケーション」を基盤とする研究にも手を染めた観がある。
感染症制御などの研究領域は、一見したところ言語学や英語教育、コミュニケーション研究などとは無関係のように思われがちであるが、そもそも「感染症」の用語は、英語でInfectious
Disease, Contagious Diseaseの他に”Communicable Disease”とも呼ばれており、「私とコミュニケーション」の因縁の深さを噛み締める今日この頃です。
船山 和泉 (熊本大学)
熊本大学文学部の船山和泉と申します。昨年4月に熊本大学に着任いたしました。以来、CAJ九州のメンバーとして名前を連ねさせて頂いております。北海道生まれの私にとりまして、かつて九州はまさにアメリカよりも遠い「彼の地」であり、昨年の着任時に来熊した際に初めて九州の地を踏みました。テキサスの様に(よりも?)暑い気候や台湾のスコールのごとく振る雨に「彼の地」の思いを強くする一方で、幸いにも佐藤勇治先生や畠山均先生をはじめとするCAJ九州の方々に温かく迎えていただき、又、熊本大学の人々とも幸い仲良くさせていただく中で、「住めばふるさと」の思いもまた育ちつつある今日この頃です。以前は全く口にしなかった焼酎が晩酌に登場することも増えました。お奨めの銘柄がありましたらお知らせ下さい。
テキサス大学大学院在学中は主に会話分析、マイクロ・エスノグラフィー、談話分析、ナラティブ分析、といった研究方法に関しての訓練を受ける一方で、伝統的に量的調査方法が中心である異文化間コミュニケーション研究にこれらの研究方法を用いる意義を考え続ける、まさに暗中模索の日々でした。博士論文は上海にある日中合弁会社でのエスノグラフィーを基にした異文化間コミュニケーション研究に関するものをどうにかこうにか書き上げました。現在は日本国内における外国人就労者と日本人就労者との間の共存問題やそこに生じる多文化共生コミュニティー等のテーマに興味があります。同じ興味を有しておられる方、またこれらのテーマに関して一嘉言おありの方、ぜひお声をおかけ下さい。